16. 六七日(むなのか)

昨日がRURUの六七日(むなのか)、今週末あたり四十九日の法要をご主人の菩提寺で行うのだろうか。


四十九日は最も厳しい閻魔大王の最終面接だというから、私もひたすら彼女が成仏でき三途の川の一番浅いところを舟で渡らせてもらえるようひたすら一人で念じようと思う。



彼女は、私が知っているだけでも病気になるまでは自由奔放に生きてこれた人だから、大王には小言の一つや二つは言われるだろうと思っている。



実は、私が彼女と知り合った頃、彼女は女性たちを何人か雇って小さな酒場をやり始めていた。

全くの素人で経験も無いのに商売はうまくいき2軒目を出すほどはやっていた。



しかし、この仕事を8年続けた間はお酒と煙草を欠かしたことが無い生活になっていて休みの日も私の忠告には耳を貸さずビールを呑んでいたのだ。

ケン三郎先生がブログで何度も食道癌とアルコールの因果関係を忠告されているように、この酒を切らさなかった生活が食道癌の原因となったのではと私は思っている。

8年間というと時間的にも癌細胞が成長するには充分ではなかろうか。


私とて、休肝日を設けているとはいえ昔から煙草も吸い酒もかなり呑んできた方なので他人事ではなく食道癌でなくとも近いうちに別の癌や病気に侵されても不思議ではないと思っている。

すでに兆候は現れていて肝臓のγ-GTPは人に言えないくらい高いし、持病の痛風を抑える為、尿酸値を下げる薬に毎日お世話になっているのだ。(中性脂肪も標準よりかなり高めだ。



私には昔からもう一つ持病があって「胃潰瘍」になりやすい体質だったのだが、こちらは数年前にピロリ菌を駆除してもらってから幸いなことに「胃炎」というか胃痛もほとんど起こさなくなった。

かかりつけの医師の勧めで、年に一度内視鏡検査を受け、制酸薬のガスターD錠は寝る前に飲むようにはしているが・・・。

その先生に先日会ったときに、次回の内視鏡は食道の方もルゴールでヨード検査してしっかり診て下さいと申し上げたのだが、曰く、

「この病院ルゴール置いてないんだよねー」だとか。

目視だけで食道癌を見つけられる専門医はその病院には居ないと思われるのにである。



また、昨年長期間、順天堂医院にRURUの見舞いで通っていたので、せっかくだからとある病院で10年位前に診断されていた肺気腫(今はCOPDというらしい)の検査を最新のCTでやってもらい、あげくの果てに根が(特に毎日病院にいると)心配性なので頭をぶつけたと言っては初めて脳CTと脳MRIまで使った検査を行ってもらった。

残っているのは、心臓と大腸の検査くらいなのではと思ったものだが上記の検査では異常は認められなかったものの健康保険制度の現状を考えると後ろめたい気もしたことは事実だ。



ところで、

今夜、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見た。



日本に104人いるというがん看護専門看護師の一人である田村恵子さんという方が取り上げられていた。

番組では、ホスピスで終末期を迎えているがん患者が迫り来る最期を前に、死への恐怖や悔しさなど、さまざまな精神的苦痛を抱えている中で、それをひとつひとつ取り除き、最期まで患者が人生を積極的に生きられるように支えるという彼女の仕事を紹介していた。


まだ、30代半ばで舌癌が皮膚に転移して治療法が無いという男性は、彼女に精神的に支えられながらどうしてもやり遂げたかった本を書くという行動を起こし亡くなる数時間前までひたすら書き綴っていたという。



また、年頃の娘さんがいる56歳の男性は直腸癌が肝臓に転移していて下半身が可哀想なくらいむくんでいて歩けないのに、翌月の彼女の結婚式には間に合わないだろうということから病院の教会で写真撮影だけウェディング姿の彼女と行っていたが、明らかにその瞬間だけは苦しそうではなかった。


末期の肺癌の中年男性は、止めていた抗癌剤治療を再度自ら頼んで行ってもらったところ、医師も心配したように副作用が原因で結果としては死を早めることになってしまったがご本人には挑戦したんだという思い切りが伺われた。


納得のいく生き方を最後にしようという田村恵子さんが言われるように、


「希望は必ず見つかる」

「心残さず生ききる」という言葉が深く私の胸に残った。


私は、RURUの最終局面を看れなかっただけに、なおさら彼女もそうした納得のいく最後を迎えられただろうかと思ったのだった。



PS:



NHKの番組で思ったことだが、病院は終末期の患者に対して、低用量抗癌剤投与を何故試みてあげないのだろうか。


日本の標準治療の名の下では、

以前このブログで書いた高橋先生平岩先生梅澤先生らが行う副作用の少ない低用量の抗癌剤治療(休眠療法)を施すことは通常の病院ではできないものなのだろうか。


最近は、低用量用法がかなり延命効果の面では成績がいいようなのだが学会発表や論文にまだなっていないせいか抗癌剤はどんな場合も標準量で行うところが圧倒的に多く、副作用に耐えられずそれが不可能な場合は治療方法はありませんといわれることになるだけだと聞く。


上記の3名の先生方は、皆さん以前は外科がご専門だったとのこと、手術にも様々な選択肢が患者によってあることをわかっておられるだけに内科治療にもいわゆるさじ加減が必要と心得ておられるように思う。

コメント

  1. ケン三郎 より:

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    治療法を提示する時にはいろんな選択肢の中から
    医者が「俺のとうちゃんなら、かあちゃんなら」こう
    いう治療を選択してもらうだろうな
    という治療を勧めているつもりです。
    治療ではなく、いかに楽に死を受け入れるか、納得の
    いく死を迎えられるかは永遠のテーマで、亡くなるたびに
    果たしてこれでよかったんだろうか、といつも考えます。
    そこからまたヒントが生まれるのだろうと。
    いろんな意見を参考にしていきたいと思います。

  2. 雄三 より:

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    ケン三郎先生、おひさしぶりです。
    医師というご職業はどうしても他人の死と向き合わざるを得ないことが多いでしょうから、医学を超えた哲学、宗教的なところでの理念や覚悟も要求されるのでしょうね。
    今後のご活躍、期待しています。
    今度、ヨード検査お願いしようかな。
    私の場合、胃潰瘍の病歴があるので内視鏡検査も問題ないですよね?

  3. toshio より:

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    雄三さんご無沙汰しております、家人さんの事残念でした・・・
    お悔やみ申し上げます・・実はうちの奥さんもたぶんアルコールとタバコ
    結婚したときには、ビール、コップに半分も飲んだら真っ赤になって飲めなかったのに後ではジョッキに生ビール何杯も杯も飲んでいました(居酒屋をやっていましたので)後で解った事なんですけど・・・最初弱くて後で飲むようになった人は食道癌になる確率が普通の人に比べて12倍も高くなるなんて
    その時は解りませんでした、知っていたらどんな事をしても止めたのに・・・
    癌になって、調べて初めてわかる事なんですね・・・・・

  4. ケン三郎 より:

    SECRET: 0
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    「病気になった人を助けるのはもちろん」
    「病気になりそうな人に積極的に検査を受けてもらう」
    ことでかなり命を救えると思います
    藤田まことさんあたりが「お酒を飲んですぐ赤くなる人、いますぐ内視鏡に
    行きなさい!」って言ってくれるといいんですけど。。

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