32.桑田佳祐さんのニュースⅡ

先日、桑田佳祐さんのニュースについて投稿したのだが、彼の病気のことは、ここ数日テレビ・雑誌等でも大きく取り上げられており、当ブログの「食道がんに関する新聞記事」も連日彼の関連記事で埋めつくされている。
彼の知名度の高さで「食道がん」が世間でこれまでにない注目を集めているようだ。

私もついつい目を通してしまうのだが、報道内容で気になることがあったので再度投稿させて頂くことにした。

様々なニュースによると、桑田さんの手術は既に無事に行われた模様でご本人もお元気のようである。

病院情報や手術の内容については、マスコミに対しても緘口令が敷かれているようで詳しくは明らかでないが、概ね次のように伝えられている。

がんの診断は初期のステージⅠ(5段階の軽い方から2番目)だが、万全を期して内視鏡による切除治療やケモラジ(CRT、化学放射線療法)ではなく根治を目指した外科手術が所要時間8時間程度で行われ、ICUで数日過ごした後、3週間程度で退院できる見込みであり、順調に回復していけば再度ステージに上がれるのが約1年後になるであろうとのこと。

半年前に手術をされ先日会見された指揮者の小澤征爾さんとほぼ同じ治療選択をされたようだが、マスコミ報道を見ていると、食道がん手術に対する曖昧な表現が目立ち視聴者や読者に誤解を与えはしないだろうかと感じられた。

医者でもない私が意見を述べるのは恐れ多いことではあるが、患者側の立場で知り得た知識の限りでも強くその印象を持ったのである。

まず、食道がんで外科手術が行われる場合、初期がんのステージであっても、患部の部分摘出も可能な胃や大腸などの手術と異なり、大動脈と密接な位置・関係にある食道は全部摘出され胃がその代わりになる(胃管と呼ばれる)ので、食道を残存させる内視鏡治療やケモラジ治療に比べ個人差はあるが術後の食生活などが大きく制限を受けることになるケースが多いのだ。
このことは、都内で現役食道外科医として働かれているケン三郎先生の有名なブログでも解説されている。

つまり、初期のがんでも進行がんであっても外科手術の内容に大差は無いといわれているので、「これまでとは全く別の身体になる覚悟が必要」と言う食道がんサバイバーの方もいるほど大きな治療なのである。

また、他のがん手術以上に侵襲が大きい身体の3箇所にメスを入れリンパ節も郭清する大手術となるのを避け、できるだけ低侵襲にするために行われる腹腔鏡・胸腔鏡下手術という王貞治さんの胃がん手術でも採用された新しい手術手技もあるのだが、食道がんへの術式としては議論があるようで桑田さんに適用になったかどうかもわからない。
ただ、手術時間や入院期間に関する報道を見ると私のつたない知識でも、一般的な開胸開腹手術になったのではないだろうかと思われる。

私が、一連のマスコミ報道から受けた違和感は、「初期がん→早期手術→脅威の回復」といった言葉で彼の早い復帰が当然のシナリオの如く印象付けられていることにある。

食道がんは他のがんに比べ治療が大変で、いまだに再発率は高く治癒率も低く、優秀な医師に高度な医療を受けても不幸な結果になることが多いことは、あまり知られていない。

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どんな病気でも人は罹患してからその病気に詳しくなるものだが、この病気の恐ろしさも同じなのだ。

食道がんが罹患前の「ごく普通の生活に戻ること」が困難な病気であり、まず目指すところは「歌うこと」ではなく「口から食べること」で、それから1年、3年、5年と生存期間を延ばしていくことが最重要課題で、それだけにひとつひとつ達成されていくことだけで大きな喜びになるのだということを多くの方々にご理解頂きたいと思う。

もちろん、彼の歌の大ファンとして、また「3丁目の夕日」時代に生まれ育ってきた同い年の者としても桑田さんの快癒を願い、再び音楽活動に元気に復帰してもらいたい気持ちはあるのだが、やはり極めてデリケートな食道がんだけに、ひたすら療養と新しい身体のリハビリに日々お過ごし頂きたいと切に思う。


食道がんに関する新聞記事

コメント

  1. 匿名 より:

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    PASS: 70a554c277c26bd18066472f387c30d8
    桑田さんの手術や、今後についての詳しいコメント拝読致しました。
    色々な知識をお持ちのようで、お医者様かと思いました。
    桑田さん自身からのメールの紹介があり、ご本人は、手術は成功し、転移もないらしく、お医者様から直接、最良の出来栄えでした、と聞いたということをやさしい夜あそびというラジオ番組で伝えられました。
    これを聞いてファンはどれほどほっとしたことでしょう。前週、同じラジオ番組で、桑田さんのご自身のことばで、病状に関するファンへの説明があっただけに、どれほどみんな心配し、手術の成功を祈ったことでしょう。
    そして、ファンからの投稿されたメセージのほとんどすべてが、とにかく待ちます。アルバムもコンサートもいつまでも待ちます。だからゆっくり治療に専念して下さい、という内容でした。みんなそういう気持ちでいるのです。だから、あなた様が書かれたようなことはみんな飲み込んだ上で、待っているのです。いきなり早く歌って下さいなんて思っているファンは稀有だと思います。ファンはみな、うわさや、他の人からでなく、ご本人が直接ファンに向けて送って下さるメッセージをありのまま受け止めて、祈っているのです。
    今まで桑田さんから、歌を通して希望をいただいたファンならみんなそうだと思います。だから大丈夫です、ありのままの桑田さんを受け止めているのですから。

  2. 雄三 より:

    SECRET: 0
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    今回の私の投稿記事が、あたかも「桑田ファンを愚弄するかのような・・・」内容のコメントを非公開で貰いましたので誤解があるのかなと思いました。
    私は、今回の一連の(楽観的な)マスコミ報道に対して感じたことを申し上げたかっただけです。
    一般に、医療関係者でもない限り、「食道がん」がすい臓がんと並んでがんの中でも横綱クラスの厄介な病気であることはあまり知られていないと思うのです。
    実際に罹患して治療を受けていく中ではじめて本人や家族がこの病気の重大さを思い知らされることが往々にしてあり、一度しか使えない放射線や根治手術の治療選択とその後のQOL(Quality of Life)の問題が大きくのしかかってくるのです。
    「治療選択」については医師ではなく、提示される治療コースから患者が最終判断を迫られるというケースが多いので、後悔先立たずといいますが、「タラ、レバ」で深く悔やむことがあるのは私自身経験しましたし、数々の闘病記ブログなどにも書かれています。
    この病名を聞くと、私が最も心配してしまうのがこの問題なのですが・・・。
    特に桑田さんの場合、全身を使って歌う独特の歌唱法の方ですから、放射線治療を選択するなど逡巡躊躇もあったと思われるだけに、手術選択をしたのは思い切った判断をされたのでしょう。
    もちろん、回復してお元気になり天寿を全うされる方々も多くおられるわけですから、悲観的になることはありません。
    およそこの世で最高と思われる治療と医師に頼ったのにもかかわらず、このがんで大事な人間を失った者としてのありのままの気持ちを書いたまでなのです。

  3. より:

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    きょう、ケン三郎先生のブログで知り、読ませてもらいました。ぼく自身が食道がんの患者で、手術の経験者ですので、術後のつらさについては良くわかっておりますので同感です。術後、三か月ほどはほとんど声が出ず、結構困りました。今で、10か月ほど経過しましたが、腹から声を出すのは怖いですね。あまり、腹に力を入れると逆流しそうですし、咳もはげしくなりますから。この辺は、経験者、もしくは患者を近くで見守ってる人以外にはなかなか理解できないんではないかと思います。それと、まだまだ食道癌という病気についてはあまり理解が進んでいないようですから。
    今後も、このブログをぼく自身の生活についても参考にさせていただきますので、よろしくお願いします。

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