17. 治療する事の意味

ここに、時々コメントを寄せてくれるkuwachannが無事に2年後検診をパスされたとのことで、喜ばしいかぎりである。

食道癌の重鎮である東海大の幕内先生の著書にも確か「2年通過すると予後が飛躍的によくなる」ようなことが書いてあったと記憶している。
ただ、このブログからリンクしているウォーラーさんのドライテック備忘録食道癌ブログを読むと彼の主治医は、「気を抜いたらアカン!5年経つまでは。」と仰るらしいので油断も禁物ということだろう。

室川さんも3年以上経っているからといって飲みすぎたり無理をなさらないようにして頂きたいものだ。

….などと、医者みたいに偉そうな事を言った前ぶりのあとで、今日は、先だって亡くなったRURUの闘病を振り返って治療することの意味について素人なりに考えてみたい。

というのも、RURUのことを思うとき、内視鏡治療を除くほとんどフルコースで行った彼女の治療の一つ一つにどんな意味があったのだろうかと考えることがたまにあるのだ。

最近のケン三郎先生のブログを読んでも専門医の方々も診断と治療法については、常に頭を悩ませておられるようだ。

問題は、
「疑わしき(病巣らしきものがある)は、罰(治療)する」のが医療の前提であると思われるが、罰し方(治療法)を如何にするかで逡巡されることも多いのだろうと推察される。
しかし、だからといって、どこかの病院のように、
「患者や家族でそれを選んでくれ」というのもいささか無茶な話ではないだろうか。

癌の場合、根治的治療での手術と放射線は1回限りなのだから、とことん分かりやすく説明した上で、迷う患者に対し、
「私や私の家族ならこの方法を選びます」ぐらいのことは、仰って頂けたらどんなに患者側は救われるだろう。

特に私たちのように、一昨年、手術と同等の成果があるという情報のあったCRT(ケモラジ)治療に相当なバイアスがかかった状況でその実績の多い国立がんセンター東病院を治療施設として選択した患者に対しては、念には念を入れて選択のアドバイスをして頂きたかったものだと思う。

どうも、私の場合、RURUが亡くなっているので愚痴めいた苦情のようなニュアンスを帯びてしまうが、今でも、あの時、すぐさま手術を選択していたらどうだったかとついつい考えてしまうのだ。

結果論とはいえ彼女のようにCRT治療開始から5ヵ月後のサルベージ手術では、どんな名外科医でも辛いのではないだろうかとも思うし、本人もその後の術後抗癌剤治療のプロセスを経て心身ともに衰弱していったことを顧みると
どこかで治療の選択ミスがあったと言えば、最初の段階でしかないと私は思っている。

今年3月、ある学会で現時点ではCRTは手術に劣り標準治療とはまだいえないと発表があったらしいが、
「あなたの場合は絶対に手術です」と何故、言ってはくれなかったのだろう。

彼女のサルベージ手術を行ってくれた順天堂や虎ノ門、忘れてならないケン三郎先生の施設等ならばかなり予後の期待できる根治術を施してもらえ、例え大差の無い寿命であってもQOL(Quality of Life)はまだましだったのではと悔やまれるのである。

「死んだ子の歳」を数えているようで今さら、虚しい気もするのだが、今後、同様な状況に置かれるだろう方々にRURUや私の無念を是非、知っておいて頂きたいのだ。

「治療の意味」を考えたとき、最初の治療で失敗した場合、その後の治療は患者にとってどんな意味を持つのだろう。

ほとんどの患者はその後の治療でも完治することを願っていることは言うまでも無いが、RURUのケースや何人かの方々の闘病記をみる限り、食道癌治療の場合、実は、最初の治療で全てが決まるように感じられるのだ。

RURUのようにCRTでうまくいかなかった場合、その後無治療ならば(国立がんセンターではそう勧められたが)、余命数ヶ月以内であっただろうし、予想された大動脈破裂という最悪の事態を回避する上で又余命を1年以上延長確保せしめた上でもサルベージ手術は意義があったとは思う。

また、その後のDCF(ドセタキセル、シスプラチン、5FU)による術後抗癌剤治療は、どういう意味を持ったであろうか。

CRTと手術でダメージのあった身体がさらに衰弱したことは否めず、QOLはさらに低下した。


若干の延命効果はあったのだろうが、間違いなく完治するなど夢のように本人は思い始めていた。
フルコースの治療に自らも希望を持って望んだ彼女であったが、その後次第に絶望感を抱くようになっていったのである。

そこにどんな治療の意味があったのだろうか。
最初に手術を勧めなかった私だけに本人亡き今でも考え込んでしまうのである。

以前、順天堂医院でご本人の希望で手術もCRTも受けずにステントを食道に入れているだけの方をお見かけしたが、健常者と見まがうばかりのお元気なご様子に驚き、命の長さはともかくあのかたち(生き方)もあるんだなと今になって思うのは刹那的だろうか。

コメント

  1. gotton より:

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    以前このコメントを記載したことがあるのですが、私の使用しているセキュリテイソフトとの相性がよくないのか、受付を拒否されてしまいました。今日はどうでしょうか? kuwachann さん、室川さん、toshioさんのHPやブログに書き込みさせていただいていますので雄三様もご存知かもしれませんが、私の妻は昨年3月に食道癌とわかり、術前抗癌剤治療をし、それがうまくいきすぎて、手術から根治CRTに変更したが、結果うまくいかず、緊急サルベージ手術を今年年初に行ない、必ずしも順調とは言えない回復過程にて現在に至っています。雄三様の奥様と似た経緯のため、DCFの効果により再発がないことに心強く感じていましたが、悲報を知りただただお悔やみ申し上げるのみです。昨年、妻の食道癌と知ったとき、インターネットで調べまくりオミノ氏のサイト、室川さんやガンに克とう会のサイトに行き当たりました。食道癌手術がいかに厳しいかを知り、オミノサイトに感動したものです。しかし妻は医科歯科大の先生を信頼し、手術を受けると言いますし、私もある著名な先生にメールして「CRTに積極的な東病院でも最近放射線の晩性毒性が比較的多く発生していることから治療方法にはよく考えられたほうが良い」との情報を得ていたことから、当初は手術を受ける決断をしたのでした。しかし、術前抗癌剤治療が上手く行き過ぎて、CRTに変更になり、CRTによって一度は押さえつけられた癌がのちほど猛威を振るう結果となりました。今思えば非常に残念ですが当時は止むを得なかったと言わざるをえません。ケン三郎先生のブログを見ても、1年前まではケモラジか手術かが拮抗し学会のワークショップで盛んに議論されていたたのですが、つい最近になって手術が優位と評価が定まったようです(もちろんCRTでガンを克服されるかたもいますが、それが上手くいかない人の率が問題で、手術の確実性に現在使っている抗癌剤のCRTは劣っているということでしょうか)。最初の選択が結果的に間違っていた、あのとき手術をしてもらっていればという思いは強いのですが、後戻りできない以上、けして諦めず、前を向いて歩んでいくしかないと考えています。先週の定期外来診察で再発予防としてDCFの話も出ましたが、妻の体力を考えると無理と思いました。今は免疫療法の一種の薬(栄養剤?)を飲んだり、電気をかけたり、食べたいものを食べたり、すきな趣味をしたり、総合的に免疫を高めるようにしています。今回の雄三さんのブログ、大いに感じるところがありましたが、まだまだ諦めませんという気持ちをもち、手強い癌との闘いに決意を新たにしております。

  2. 雄三 より:

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    gotton さん
    コメントありがとうございます。
    お名前は、皆さんのブログで存じ上げており奥様のことも読ませていただいておりました。
    仰るように、うちのRURUと治療プロセスが似ていますね。
    ただ、手術を前提にした術前抗癌剤をおやりになっているところが異なるところでしょうか。
    手術を当初から覚悟されていたのに、CRT→サルベージ手術という経緯は最初は手術から逃げてCRT→サルベージ手術に至ったRURUの場合とは、無念さは比べられないくらいだと思います。
    しかし、仰るように後戻りはできないわけですから、今後も奥様には元気になって頂くようあらゆることをお考えになる気持ちは、経験したものとして痛いほどわかります。
    また、gotton さんは現在奥様と闘っておられるわけで、もし、私の拙文で不愉快なお気持ちになられたのであればお許し下さい。
    私の場合、RURUを亡くしてしまってまだ2ヶ月なので、ちょっと医療に対し恨み節というか恨めしさのようなマイナスワードな文章を書いてしまいがちになるのです。
    ところで、DCFなど術後抗癌剤は最近の発表で無再発期間を延長することが認められているだけのようです。
    術後のRURUは、満足な食事ができないことや心身の衰えなど「不定愁訴」に苦しんでおりましたが、私が最後まで悩まされたのもそれにいかに付き合ってあげるかということでした。
    gotton さん、がんばらないけど諦めないの気持ちを維持なさってください。
    応援しています。

  3. kuwachann より:

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    雄三さん、gottonさん、こんにちは。未だにゲロゲロとトイレに駆け込みながらも、その状況に慣れて来ています。QOLっていったい何なんだろうと思います。前と同じように吐いていても、慣れてしまうと別に重大事ではくなっています。gottonさんが室川さんのところで書かれていた生存20年目の方もきっとそうですよね。
    雄三サンのお陰でケン三郎先生のブログもずっと読んでいますが、早期は早期なりに、進行期は進行期なりに治療法を確定するのがむずかしいのですね。お医者様の苦労もやっと理解できるようになりました。
    昔のオミノサイトで頻繁に言われていたのQOLでした。最近思うのがいったいQOLって何なんだろう。。。です。私の場合CRT治療が功をなしペットではがん細胞が消えていました。それでも医者は途中で治療方法を変えることはありませんでした。患者として私が健康だったために少々はやりすぎでも予兆的にできるだけの治療をして根治根絶するという姿勢だったのだと思います(当時は医者を恨めしく思った物です。)
    摘出後の生体では食道にも、リンパにもがん細胞はなく、食道には放射線治療の痕跡があっただけだそうです。当初腫瘍が筋層まで届いて穴があいていたためにCRTも手術も行ったわけです(エコー内視鏡では一番近いリンパ節をしらべることができなかったそうです。)リンパにがん細胞が元々侵入していなかったのかもしれないし、CRTでやっつけられたのかもしれません。
    QOLの観点から見て患者にとって一番つらいのは「これをやれば治ると思っていたのに、そうじゃなかった。いつまでも宙ぶらりんが続く。終わりがない。」というシナリオだと思うのです。RURUさんの場合もgottonさんの奥さんの場合もそうでしたよね。この終わりのない一見無駄な治療の積み重ねがあると患者は「死でもなんでも、終わりにしたい」と思うのだと思います。
    少なくとも私の関わって来た米国の施設ではCRTで根治するという姿勢も結論もないようです。それどころか内視鏡切除に対してもまだまだ保守的です。根本的な医学哲学の違いかもしれません。

  4. 雄三 より:

    SECRET: 0
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    kuwachann、
    おはようございます(日本時間)
    インターネットで闇雲に調べていたとき、何度も目にしたのが、
    「日本では手術を勧めるが、米国ではCRTが主流の治療法となっている」
    でした。
    しかし、調べ進めると米国では腺癌が多数を占めているとの事で、
    CRTが不適応のケースが多いとの事で矛盾を露呈しましたが、
    どうも情報が錯綜するというより
    CRT治療にバイアスがかかっている医療関係者らが情報を過度に流しすぎているような気もします。
    CRTで完治される方もいらっしゃるのでしょうが、gottonさんも言われるようにそのパーセンテージが手術よりまだまだ劣るということなのでしょう。
    誰でも食道温存を望むのは当然の希望でしょうが、
    「食道やめますか、人間やめますか」くらいのことを外科の先生方は言いたくても、腫瘍内科や放射線科とのバランスで言いにくいのでしょうかねぇ。。。

  5. acco より:

    SECRET: 1
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    はじめまして。
    私の母が胸部下部食道癌と宣告され、色々とネットを通じて
    ブログを拝見させていただくようになりました。
    今、母は治療法について模索している最中です。
    母は食道癌以外に、高血圧・腎臓が悪く、手術をすると
    間違いなく腎臓透析になってしまう可能性が高いことがあります。
    私は母の体力やその後の事を考え、抗癌剤や放射線治療を希望したいと考えておりますが、こちらのブログを拝見し、化学療法も効き目が無ければ、その後の治療方法に限界があるのだ・・・という事が恐ろしくもわかりました。
    もちろん手術をすれば全てがウマく行くなどという考えは持っていませんし、
    これはもうどちらかに決めなければならないのですが、正直、決めかねている部分もあります。
    とても不躾ではありますが、何か選択の参考になる事がありましたら、
    教えていただけると有り難いです。
    本当に不躾で申し訳ございません。

  6. SECRET: 1
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    雄三 様
    初めまして、LifePalette事務局です。
    LifePaletteは、
    「病気の体験を通して、患者同士が、それぞれの闘病体験を伝え、共感し、交流していく医療系コミュニティーサイト」です。
    http://lifepalette.jp/
    私たちには、多くの闘病記をLifePaletteに掲載する事で、
    ユーザーの方々に多くの闘病記の存在を知っていただき、自分や家族・友人で病気を持った人々の励みになって欲しい、という思いがあり、
    現在ウェブ上の闘病記ブログを、当サイト上に転載させていただける方を募集しております。
    さしつかえなければ、LifePaletteへの闘病記転載の可否を、
    pr@lifepalette.jp
    までご連絡いただければ幸いです。
    また、転載の詳細につきましても、同アドレスにてお問い合わせください。
    ご連絡、お待ちしております!

  7. 海天狗 より:

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    RURUさん、残念な結果でさぞやお辛い事と思います。
    心からお悔やみ申し上げます。
    私のブログもお仲間に入れて頂けるとは嬉しい限りです。
    私が楽しく長く生きて行く事で、同じ食道ガンになってしまった人たちに少しでも勇気や希望を与えられると信じてブログを書いています。
    雄三さんのブログは今日はじめて拝見しましたが、「Blue Water World」はボクのPCのお気に入りに登録してあるので、ビックリして鳥肌が立ちました。
    チョッと変わったご縁ですが、これからもよろしくお願い致します。

  8. 雄三 より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    海天狗 さん、ご返信とご丁寧な弔詞をありがとうございます。
    Blue Water World のサイトをご存知だったとは驚きました。
    1996年の3月から、運営しているわりには予算などの都合でデザインなどはあまり変わっておりませんが、[絵文字:v-9]
    飽きることなくチョコチョコと更新していますの今後とも宜しくお願いします。
    関連リンクにもある「食道癌のブログ」の食道外科医ケン三郎先生は、今、夏期休暇でご家族連れでフィジーに行かれていますが、羨ましいの一語ですね。
    でも、ふだんは食道癌との闘いで忙殺されている方ですから・・・。
    また、今度、海の話でもしましょう。

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